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昭和大学藤が丘病院消化器・一般外科

急性腹症について

疾患・治療

急性腹症とは、「発症1週間以内の急性発症で、手術などの迅速な対応が必要な腹部(胸部等も含む)疾患」と定義されています。腹痛の原因はよくわからないまま自然に治ることもありますが、中には緊急手術を含む迅速な対応が必要な疾患があります。また、腹痛の原因として心筋梗塞や胸膜炎、気胸など腹部臓器以外が原因のこともあるため注意が必要です。

急性腹症の原因として頻度が高い疾患は、急性虫垂炎、胆石症、腸閉塞、尿管結石、胃炎、消化管穿孔、胃腸炎、急性膵炎、大腸憩室炎、産婦人科疾患などがあります。このうち、主に当教室で治療を行う疾患は急性虫垂炎、胆石症、腸閉塞、消化管穿孔が挙げられます。当教室では急性腹症に対する手術として腹腔鏡下手術を積極的に行っていますが、重症例や他臓器損傷が危惧される場合には、安全性を優先して開腹手術を選択することもあります。

1. 急性虫垂炎

「盲腸」や「アッペ」と呼ばれる疾患ですが、軽傷から重症まで幅広く、適切な対応が必要です。放置すると穿孔及び腹膜炎に進行し、命にかかわります。一生のうちに一度は虫垂炎にかかる人の割合は男性が8.6%、女性が6.7%とされています。
軽症の場合は抗菌薬の投与で軽快することも多いのですが、症状や希望に応じて手術を選択します。重症の場合は緊急手術を行うこともありますが、拡大手術や感染等の合併症が多くなることが危惧されます。安全に手術を行うために抗菌薬投与による治療を行い、炎症が改善した段階(2-3か月後)で手術を行うinterval appendectomyを選択することもあります。

2. 胆石症に伴う急性胆嚢炎

胆石症は急性腹症の3~10%を占める疾患です。結石の場所により胆嚢結石症、総胆管結石症、肝内結石症の3つに大別されますが、このうち胆嚢結石症が70~80%を占めます。胆嚢結石症があっても90%以上は無症状のまま経過すると言われており、この場合には経過観察を行います。しかし、胆嚢結石症が原因で腹痛等の症状が生じた場合には手術が勧められます。
当教室では胆嚢結石症の症状が改善したのちに手術を行うことが多いですが、急性胆嚢炎を伴いさらに腹膜炎が生じている場合や症状が重篤な場合には緊急手術を選択することもあります。

3. 腸閉塞

腸閉塞は食物の通り道である消化管のどこかに閉塞が生じ、内容物の流れが悪くなることで腹部膨満や腹痛などの症状が生じる疾患です。原因は(以前行った腹部手術による)癒着、腫瘍、ヘルニアなど多岐にわたります。閉塞する部位により小腸閉塞と大腸閉塞に分けられますが、小腸閉塞の原因は癒着やヘルニアが多く、大腸閉塞の原因は腫瘍が多いです。原因により治療法は様々ですが、手術以外の治療(保存的治療)で改善しない場合や腸管の血流障害を伴う絞扼性腸閉塞の場合には緊急手術が必要となります。

4. 消化管穿孔

消化管のどこかに穴が開き、内容物や空気が腹腔内に漏れて腹膜炎に発展し、腹痛などの症状が生じる疾患です。腹膜炎は放置すると命にかかわるため、迅速な治療が必要な疾患です。穴が開いた場所により上部消化管穿孔(胃、十二指腸)と下部消化管穿孔(小腸、大腸)に分けられます。

1) 上部消化管穿孔
原因としては胃・十二指腸潰瘍が最も多く、その他には腫瘍や外傷などが挙げられます。過去の報告では手術症例の死亡率は10%前後とされていましたが、周術期管理の進歩により死亡率は減少していると言われています。
軽症例では経鼻胃管という鼻から胃に挿入する管を用いた保存的治療が行われますが、その奏効率は70~80%とされています。症状や腹膜炎の程度、年齢などに応じて緊急手術が選択されます。


2) 下部消化管穿孔
原因としては腫瘍、大腸憩室、便秘、外傷などが挙げられます。手術症例の急性期死亡率は12~40%と報告されていましたが、周術期管理の進歩により最近では10%台との報告が多いです。死亡率が高い重篤な疾患であり、原則的に緊急手術が必要です。

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